カーボンフィルターとはなに?
できることと、できないこと

水テクノロジー誌が発行している”EPA(米国環境保護局)の水汚染物質の規制”の中でもっとも大きなセクションを占めているのは有機化学物質(揮発性有機物質VOCを含む)です。この分類の中でEPAは32の非常に危険な化学汚染物質を列記しています。これにはよく知られているベンゼン、1,1-ジクロロエチレン 、四塩化炭素、ダイオキシン、スチレン、トルエン、クロロホルム、塩化ビニールなどがあります。この32のリストの膨大さの一つの例に総トリハロメタンのカテゴリーがあります。このカテゴリーには、有機物質を含んでいる水(ほとんどすべての水になります)を塩素で処理した時にできるといわれている、いまだに数えられていない化学物質が数千はあると推定されています。発癌物質と疑われており、ほとんどすべての塩素処理された飲用水に存在している総トリハロメタンの最大許容レベルはわずか1ppm(百万分の一)の1/10です。有機化学物質のカテゴリーですべての第一の処理法であり、またほとんどすべてのケースで推奨されているただ一つの処理法はカーボン(活性炭)です。

EPAの殺虫剤のカテゴリーで列記している14の毒は、よく知られているアルディカーブ、クロロデン、ヘプタクロル、リンデンなどです。14すべてのケースで活性炭は唯一の推奨されている処理法です。12の除草剤(2,4-D、アトラジン、他)では活性炭が唯一の推奨されている処理法です。

有機化学物質、殺虫剤、除草剤の標準の処理法であり、ほとんどのケースで唯一の推奨されている処理法は活性炭です。

浄水フィルターというときには、ほとんどのケースで種類は違えどカーボンフィルターを指しています。エジプト人が炭の中に水を貯めておくと長持ちし、味もよくなったことからカーボンは水処理の標準となり、何世紀ものの評判はその効果を証明しています。

EPA汚染物質リストの次に出てくる3分類に対してはカーボンのフィルターは必ずしも有効ではありません。カーボンは4つの微生物汚染リストのうちの一つ、濁りで触れられているだけです。コリフォーム除去やシストには推奨されていません。しかしながら最近の市販の非常に密なソリッドカーボンブロックはバクテリア(製造メーカーはほとんど主張していませんが)や、ジアルジアやクリプトスポリジウムなどのようなシストも手際よく除去します。Multi-Pureのソリッドカーボンブロックは、実際、NSF(もっとも権威のある製品の試験と認可をおこなっている独立団体)でクリプトスポリジウムの除去用として一番最初に認可された浄水装置でした。Multi-Pureとその他のいくつかの非常に密なカーボンブロックフィルターは単に制限された孔のサイズでシストを除去します。Multi-Pureブロックは絶対0.5ミクロンフィルターで、孔の約10倍の大きさのクリプトスポリジウム微生物を除去します。従って、他のカーボンでないタイプでも密なフィルターであれば同様に機能しますが、最近市販されている非常に密なカーボンフィルターブロックは微生物汚染に対しても非常に効果的です。

これは無機物質の分類でも当てはまります。活性炭はEPAのリストでは水銀に対してのみ好まれる処理法のように見えますが、カーボンブロックは鉛も除去するように設計できます。鉛とアスベストの除去としてNSFで認可されているものもカーボンフィルターも現実にあります。しかし、無機物質の除去はどちらかというと逆浸透膜、蒸留、イオン交換システムに向いている分野です。

最後の分類である放射性核種に対しても、カーボンは有効ではありません。逆浸透膜、イオン交換が絶対的に選択されるべき処理法です。

家庭用の浄水システムを検討中なら、下のことは頭に入れておいたほうがいいでしょう。

塩素はEPAでは水の汚染物質とはみなしていませんので、これまでのEPAの汚染物質の分類の中に出てきていません。塩素の害が議論されている昨今、これは明らかにおかしいことですが、これは政治的に便宜的なためでありすぐには変更になりそうにありません。(すべてのEPAの汚染物質の最大許容量は実際上は必ずしも根拠がない、政治的に交渉された数字です。数字は理想と浄水場で現実にできることとの妥協です。) 塩素の除去はカーボンが最も得意とする分野で、他のどの材料もカーボンの塩素除去能力に匹敵するものはありません。

逆浸透膜は塩素や特定の化学物質を取り除けないのが欠点だとチャートを示して説明している一部の浄水器メーカーもありますが、逆浸透膜浄水器はカーボンフィルターを併用しているので事実ではありません。実際、逆浸透膜のメンブレンフィルムは塩素からの破損を防ぎ保護するために前の段階で塩素を取り除いてやる必要があります。宣伝文句は事実ですが、実際上は意味のないうそになります。「逆浸透膜は塩素を取り除かないが、その前に置かれたカーボンフィルターが取り除いているというのが事実です。」 高級機種の逆浸透膜浄水器ではマトリックスをプレフィルターとして使用している製品もありますので、逆浸透膜メンブレンがなくても下手な浄水器よりははるかに能力は上かもしれません。蒸留水は塩素とVOCの除去には重大な問題があります。蒸留する前にカーボンで浄化しておかないと、VOCや塩素が蒸留水に再び入り込んだり、空中に放出されて呼吸を通して体に入り込んでしまいます。

カーボンで簡単に除去できない汚染物質はフッ化物、硝酸性窒素、ナトリウムです。逆浸透膜と蒸留はこれた3種のすべてを取り除きますので、浸透膜あるいは蒸留とカーボンフィルターの併用は完璧な処理をします。また、これら3種はその目的用に設計されたカーボンタイプでない選択式のフィルターでも取り除くことができます。例えばフッ化物の除去が望ましいなら片方がフッ化物除去用フィルター、もう片方がカーボンタイプのダブル方式にすることもできます。

すべてのカーボンは同じに作られているわけではありません。 ある種類は他の種類よりも性能にすぐれており、またある種類は特定の物質を除去する特殊な選択用のフィルターとしても作られています。性能はカーボンの種類と量、フィルターの設計や水との接触時間に依存します。一般的にカーボンブロック粒状カーボンフィルターGAC:Granular Activated Carbon、グラニュラー活性炭とも呼ばれる)よりも性能にすぐれていますが、後者でも十分仕事を為すことも多くあります。粒子状のカーボンはコーヒー挽きのような粒子状で、一般的にはチャネリング(水路溝の形成)と流動化の問題があります。ソリッドカーボンブロックはカーボンを同じ場所に留めておきますので水に流されません。

カーボンフィルターは製造された製品です。たまに木炭と呼ばれることもありますが、カーボンフィルターは酸素のない状態で高温と蒸気で処理(蒸し焼き)されたカーボン材料です。

カーボンにも多くの種類があります。ほとんどのカーボンフィルターは石炭から作られていますが、木材やヤシ殻からも作られます。ヤシ殻カーボンは再生可能な資源から作られることと、非常においしい水を作り、またトリハロメタンを効率よく除去することから人気があります。最近では硫化水素(井戸水で卵の腐ったにおいの元になる)やクロマリン(浄水源で殺菌剤として使用されることもあるアンモニアと塩素の混合物)を取り除く、新しい特殊用途の触媒カーボンもできてきています。

カーボンフィルターは吸着のプロセスにより化学物質を取り除きます。吸着とは固形物に接触した分子の薄い層を剥ぎ取ることです。カーボンは磁石が金属を引き寄せるように分子レベルで特定の化学物質を引き寄せます。表面が埋まってきたらフィルターは捨てて新しいものと交換されなければなりません。

適時なフィルターの交換は非常に重要です。カーボンフィルターの容量は汚染物質により異なります。多くの場合、フィルターの交換時期を決めるのに塩素の除去能力を指標に使います。これはあなたがフィルター性能として塩素除去のみを期待しているなら問題ありませんが、ほとんどのカーボンフィルターは塩素を除去しなくなる前に他の物質を漏らし始めます。例えばマトリックス+1押し出しカーボンブロックは20,000ガロン(@1.0gpm流量時)の驚くべき塩素除去能力を持っていますが、同じフィルターのトリハロメタンの除去能力は750ガロンです。それゆえ、塩素の除去能力がまだ十分残っていても一年に一回はフィルターを交換すべきです。

フィルターメーカーはフィルターのサイズを”ミクロン”で表します。ミクロンはフィルターの穴の大きさです。小さいほうがフィルターは目が細かく密になります。CTOは塩素(Chlorine)、味(Taste)、におい(Odor)の略で、塩素を除去して味とにおいを改善する場合にCTOモデルといいます。メーカーは保証はしませんが、CTOグレードでも他の物質は除去します。CTOグレードのフィルターカートリッジは穴の径がおよそ10ミクロンです。5ミクロンのフィルターはより多くの化学物質を除去しますが、水中に浮遊物などが多い場合は詰まりが早くなります。1ミクロンフィルターは飲用水専用です。一般的に密すぎると水の出が悪くなり使い勝手が悪くなります。

フィルターメーカーはまたミクロンのレーティング(評価)を”絶対”と”呼び”で表します。絶対は厳密な値(最大)という意味です。呼びは”およそ”の意味です。新しいマトリックス+0.5のフィルターは絶対0.5ミクロンです。これが実用的なカーボンフィルターの限界値です。これ以上密になるとすぐに水が通過しなくなります。マトリックス+1は呼び1ミクロンですので、1−2ミクロンの範囲あるいはそれより大きな異物を取るのに向いています。(ちなみにSeagullのフィルターサイズは呼びが0.1ミクロンで、絶対は0.4ミクロンですから0.4ミクロン以上の大きさの異物は必ず、0.1−0.4ミクロン程度のものも大半は捕らえます。)

カーボンの能力を上げると寿命は短くなります。簡単にいうと非常に密なフィルターはすべてを捕えるので早く詰まります。3−5年持つと保証している飲用水のフィルターは大きな物質はすべて通過させるので長持ちします。

これまでの話をまとめると、カーボンは非常に用途が広く高効率の水処理媒体です。カーボンは膨大な表面積を持っています。1kgの粒子状カーボンの表面積は実に110万m2(東京ドームの約24倍)に相当します!カーボンは有機化学物質、VOC、殺虫剤、農薬、塩素、塩素の副産物を処理するための一番よく知られている媒体です。また味とにおいを改善する材料としても右に出るものはありません。ソリッドカーボンあるいは押し出しカーボンブロックの形状にすると、非常に高品質のサブミクロンレベルまでの物理ろ過フィルターにもなります。

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